Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “秋の木陰で 物思う”
 



 楓に桜にニセアカシアに、紅蓮の赤が見事に燃えるはナナカマドかドウダンツツジか。今年の秋もいよいよ深まり、東北の方から始まった紅葉が“錦秋の絶景”なんてタイトルとかつけられて、朝いちのモーニングショーやら特別枠の旅番組やらで取り上げられてて。今年も10月までは暖かい秋だったからね、京都なんかはこれからが見ごろなんだって。桜も遅いけど紅葉も遅い土地なんだねなんて、一丁前にもお母さんと話してたのが今朝のこと。出掛けに交わしたのがそんな話題だったせいか、都心の街なかでも公園や学校の立ち木や街路樹が少しずつ色づいて来たななんてことに、柄にもなく ついついと眸が行った坊やであり、
“そいや、ルイも何か言ってたな。”
 まだ高校生のくせして“紅葉がどうのこうの”だなんてジジむせぇよなぁ。あ・そか、爬虫類だから冬が近いのには過敏なのかって、そんなやり取りをしたのを思い出す。
『ウチも庭掃除が大変だからだよ。』
『そか。ルイんチの庭って広いからなぁ。』
 当然のことながら、そんなことを自慢したかったらしき彼ではないから、まあなと適当な相槌を打ち、
『俺もたまには駆り出されてたんだが、どういう加減か、俺が掃除をしていると必ずキングが飛んで来て、落ち葉の山へ飛び込むやらホウキにじゃれつくやらするもんで。去年からはとうとうお役御免になっちまったよ。』
 あらら、妙な懐かれ方をしてらっさること。あとで坊やが葉柱夫人に訊いたところが、
『ああ、だって。ルイちゃんたら、ホウキの使い方が変なんですもの。』
 ………変って。どんな“変”な使い方なんだろう? 却って謎が深まってしまったとかどうとかいうのはさておいて。
(苦笑) 一番遅いのだろうイチョウもようやっと、緑からのグラディエーションも移行し切ってのことだろう、全体が明るい黄金色に染まりつつあって、
「きれーvv」
 あんまりのけ反りすぎてのことか、あ〜んと口を開いて頭上を見上げてる連れの方へこそ、気が気じゃないからって目が離せないでいたりするのだけれど。
「おい、ちゃんと足元…」
 に気をつけなと言い終わらないうちにも、舗道の点字ブロックの出っ張りに小さな爪先を引っかけたらしく。あっと言う間に躓
つまづいて、ほてんと前へ転んだ小さなクラスメートだったりし。
「〜〜〜〜〜。」
 咄嗟に両手をついたらしいので、重心の高い頭やお顔は打たなかったみたいだが、小さなお膝は間違いなく堅い地面にぶつけていたし。何より、突然のダイビングをさせられたようなものだけに、びっくりしたに違いない。転んだまんまの格好で小さくなってたお友達。駆け寄って傍らへと屈めば、大きな瞳がたちまち潤んでくのが横から見えたし、ふにゃ…と撓
たわんでる小さな声もして。
「あ〜〜〜、泣くなっ。」
 慌てた妖一坊やが、ついのこととて。少しばかり声を張ってしまったのは、叱った訳ではないのだけれど。勢いに怯
ひるんででも良いから泣き出さないで…とは思ったよ。このところの瀬那くんは随分と気丈夫になったから、最初の切っ掛けさえ飲み込めば、そのまま我慢して泣き出さないでいられるって知っている。周囲の人へは、何だか偉そうに命令する子だなって思われたって、この際は全然構わない。こういうことは、少しずつの積み重ねだからね。一回我慢出来たら次も我慢出来るから。そうやって少しずつ泣かないでいられるようになることだからね、頑張れってつもりの声だったの、判る人には判ったらしくて。何より、セナくんにも届いてたらしくって。
「…ふみ。」
 まずはと身を起こし、小さな腕を包む玉子色のトレーナーの袖のところで、ごしごしってお顔を拭おうとしたそのタイミングへ、座り込んでた格好に二人の前へと影が差す。え?と二人してお顔を上げれば、

  「セナ。」

 ただでさえ大きいんだから、そういう時は少しで良いから腰を屈めなさいって。いつも言ってはあるんだがなぁと苦笑している、全国枠で有名人の桜庭さんを…恐縮もなく従えて現れたるは。アメフトの世界でならば、その桜庭さんは知らずとも彼のことなら知ってるというファン層も厚い、進清十郎さんという超高校級フットボウラーで。
「ふや…。」
 大好きな進さんが現れた途端に、こちらさんも思い切り現金なことには。早回しのビデオ再生でも見ているかのようなてきぱきとした所作にて…ちょぉっと足がもつれかけもしたけれど、よいちょと自力で立ち上がると痛い筈のあんよでもって、あと数歩分はあった間合いをたかたかって駆けてって自分で埋めたおチビさん。
「進さんっ。」
 近づいて来た間合いに合わせて、やっと屈んだ仁王様の、大きなお手々にひょいって抱きとめられて。そのまま抱っこされるまでは、あのね? セナ、痛かったけど我慢したの。むぎゅうっと しゃにむにしがみつく動作がそんな心理を物語る。ヨウイチ坊やからは随分と高みになってしまった…背条を伸ばして立ち上がった進の懐ろにて、モミジのような両手を広げてみせて“ど〜れ”と確かめているのは、怪我をしてはいないかと問われているからだろう。気持ちがすっかりと“二人の世界”へ移行している彼らには、外から何を言っても届くまいから、それを察してやれやれと肩をすくめた金髪の坊やへは、
「保護者さんも大変だねぇ。」
 こちらもお連れから“意識外”へと追いやられたクチの桜庭さんが、ねぎらうような声をかけて来る。進さんよりも背の高い彼は、それでもソフトな笑顔が優しい印象をふりまくタイプの人であり、それにそれこそ、この金髪の彼とのお付き合いも長いから、小さい子供の扱いにも慣れていて。セナの様子を見ていてか、傍らで一緒にお膝をついてたヨウイチ坊やが、コーデュロイのおズボンの膝をはたきながら立ち上がるのと反対に、お膝へきれいな手をついて、自分の姿勢を少しだけ低くしてくれて。
「向こうから見えてたよ? セナくんのことが気になって気になって、ヨウちゃんまでが足元お留守になってたし。」
 今日は泥門の駅前での待ち合わせだったのだけれど、そこは年嵩のお兄さんたちが気を利かせたか、先に着いたからとこっち方向へ“お迎え”に来ていてくれたのだろう。顔が指さないようにと、小粋なジャケットのデザインに合わせた、ハンチング風のつばのあるお帽子をかぶってた桜庭さんへ、
「あれで俺が転んでたら笑えたよな。」
 自覚はあったらしく、むうと唇を尖らせる坊やが、何だか珍しくも年相応のお顔をして見せたので。アイドルさんがそちらへも何かしら感じたか、くすくすと綺麗な笑い方をする。この桜庭さんもまた、あの小さな小さなセナくんとお不動様みたいに無愛想極まりない進さんという不思議な組み合わせの二人を、その馴れ初めから知ってる人だからね。そんな彼もまた、愛らしい子・小さき者への対処に不慣れな進さんをフォローしていて大変なんだろなと。それをけしかけた張本人さんが、同情かそれとも同調か、ちょっぴり大人みたいな苦笑を付け足すと、
「ヨウちゃんのこと、よくよく知ってる僕としては、あんな風に“泣くな”なんて言うのって、物凄く構ってやってるなっていう順番になるんだけどもね。」
 ほらね。ただ利かん気から、煩わしさから言ったんじゃないってこと、ちゃんと判ってる人がいる。素振りだけに留まらず、物の把握や考え方まで大人びていてクールな坊や。お友達にむずがられたとして宥めるだろうか。勝手に泣き止むまで放っておくのじゃなかろうか。優しくないって訳じゃあないのだけれど、ただ…転んで泣くのも自業自得と構えるタイプじゃなかったかしら。そうと知っていたからこそ、意外だなあと思った桜庭さんだったらしかったけれど、
「泣いた子をあやすのは何か苦手だ。」
 セナくらいならそうでもないけど、小さい子はサ、気が済むまで泣かしとくしかないじゃんか。やっぱりそうと知ってた坊やであり、けどなと付け足されたのが、

  「前は全然平気だったのに、何かこの頃…釣られかかってしまうから。」

 手放しで泣かれるのも、泣いちゃってごめんねって堪
こらえもって泣かれるのも両方とも、こっちまで何か切なくなっちゃうからさ。そんな風に言い訳し、
「俺もそれなりの年になったって事かなぁ。」
 年を取ると涙腺が緩くなるってよく言うじゃんか。ウチの母ちゃんなんか、国体の入場行進の中継見てるだけで泣いちゃうぞ? ほら、台風の被害の爪痕生々しい○○県からの参加ですとかって実況聞くとさ、思わずじわじわって来ちゃうんだって。桜庭はそういうことってないのかと、綺麗な金茶の瞳が ついと見上げて来たのへ、
「あ…ああ、いや、俺はまだそこまでは。」
 そっか。まあ桜庭は俳優だから、感情をセーブしたり無理から演技して見せたりっていうのをしなきゃならない立場にあるしな。勝手に“うんうん”なんて納得しちゃった坊やだったので。危うく吹き出すところだったのを誤魔化せたあたりは、彼が言う通り、感情をセーブするのが上手になれたってことなのかもしんないが。
“あ〜、危なかった。”
 ホンマにね。
(笑) そんな二人が特に申し合わせることもなく見やったのは、少し先にてセナくんの小さなお手々を“何か隠れていないかな?”と覗き込んでた、年の差も身長差も半端じゃないぞなカップルさん。どうやら擦りむいてはいなかったらしく、今は“きゃーの〜vv”という軽やかなはしゃぎ声と共に、その小さなお手々が伸ばされており、お兄さんの精悍な頬に触れている。スポカジなのか、単に学校指定のウィンドブレイカーなのか、白基調の襟やら袖口やらに入った黒いラインがシャープなジャケットが、絞られた屈強な肢体をより精悍に見せている進さんであり、
「セナがますますチビに見えんだよな。」
「だねぇ。」
 そういえば、いつだったか親子と間違えられたんだってな。そうそう、あれれ? ヨウちゃん見てたの? いや、セナが目一杯機嫌悪くしてやがってさ。あ・そっか、ベスト8ん時だったよね、あれって。賊学さんの車でセナくん送ってもらったんだっけ。そこまで思い出したらしい桜庭さんが、
「僕も丁度、背後っていうすぐ傍にいたんだけどもさ。」
 その時のこと、語ってくれて。スタジアムから離れてたところに居た時だったし、僕らもまだ装備を着てた訳じゃなかったからね。うん、相手も僕らと同じくらい、高校生くらいの子たちだったかな。アメフトを観に来てたって感じじゃなかったから、他の競技の大会にでも来てたのかなぁ。大きめの王城Tシャツを着て、ご機嫌そうにはしゃいでたセナくんを可愛いわねぇって見てたらしくて、そこから相手をしていた進の方にも関心が移ったらしいんだけれど。恐持てがして見えたのか、兄弟には見えなかったからそれじゃあって短絡的な想像からか、今時には珍しくないわようってことで“お父さん”だろうって納得されててさ。
「進にだって聞こえなかった筈はないんだけれど、特に変わった様子はなかったかな。」「何だよ? それ。」
 だってさ、可愛くってしょうがないんだねぇって、仲の良い親子だねぇって言われ方だったから。進にしてみりゃ、もしかして…嬉しい言われようだったのかも。
「…そういうもんかなぁ。」
 桜庭さんの出した見解へ、綺麗な形の眉をきゅううっと寄せて、目許を思い切り眇めた金髪坊やだったのだけれども。そんな彼へと、桜庭さん。別な感慨が沸いたらしくて、
「少しは寂しいんじゃないの?」
「…何がだよ。」
「だってさ。」
 さっきからずっと、視線や意識が向こうの二人へと向いたままじゃない。屈んでた腰を伸ばしがてら、そのまま舗道沿いのガードレールの縁へと浅く腰掛けた桜庭さん。特にからかうような気配はなかったけれど、気落ちしたなら強がらないで、ここでだけ認めても良いんだよって、そんなお顔をして見せており。それを見上げた来た蛭魔さんチの妖一くんへ、んんっ?て小首を傾げて見せれば、
「…そっかな。」
 今はこっちを向いてた視線。虚を突かれたそのまま、あらためての熟考に入ったか。ちょっぴり俯けてから、やっぱり先の二人を眺め、そんな自分へ“ああホントだ”と気づいた彼だったらしく。………でもね。
「寂しいってことはない、と思う。」
 だってガッコでは相変わらずに世話焼かされてっしよと、すぐさま思い当たる“日常”が山ほどあるから、あのね? 彼にはまだまだ“手のかかる弟分のセナくん”という把握にさしたる変化はないらしく、
「この頃では“進さんは、進さんが”に加えて、葉柱のお兄さんはこゆ時どうするの? 何て言ってくりるの?って、なんかますます喧しいしさ。」
 あれも一種の余裕なのかな、余計な世話だってんだよな、ったくよ。ぷんぷくぷーとまたまた膨れたのが、妙に…。

  “可〜愛い〜vv

 髪も瞳も肌目の色も、どこを取っても儚くも淡い、そりゃあそりゃあ大人しげな色調だってのにね。射通すような真っ直ぐの眼差しを、恐れるものなく振り上げていて、そんな…少し強気な表情をのせた、きりりとすっきりとした面差しには、バックスキン地のジャケットも決まってて。大人びたお洒落も一丁前な口調も、上辺だけじゃない君だってのはよくよく知っているけれど。だからこそ、かな? ムキになったり感情的だったりするのが、素直な想いの発露と判って。それが何でだか、こっちにも嬉しい。子供好きだが、正しい構い方まで知っているとは言えないような、様々なジャンルでそれぞれに一線級という、ある意味“特異な”大人たちに囲まれてたせいだろか。彼もまた極めて“特異な”子供になってしまっていたからね。アイドルなんてやってる自分も他人のことは言えないながら、それってあんまり良いことじゃないのかもって、これでも一応は憂慮していた。だからだから、この1年の間に…新しいお友達との交際から芽生えたのだろう、様々な“子供らしさ”や素直さの発露には、何でだろうか我がことみたいに、いちいち嬉しいなと喜んでいた桜庭さんだったらしくって。…その“お友達”ってのが、あなたと同じ高校生だってのは問題ないんでしょうかしら? しかもしかも、その彼もまた…ある意味で、ちょ〜っと特異な人なような気も。
“まあまあvv
 僕らに比べりゃ、肩書き以外は…本人の資質って点では頼もしいくらいに普通の人ですってばと、何だか妙な褒め方をしたそのタイミング、

  「………お。」

 そこへとドップラー効果を引き連れて聞こえて来たのが、独特な重低音がお腹に響く、大型オートバイのイグゾースト・ノイズで。甘い金色に温められてた柔らかな髪の隙間から、ちょこりと覗いてた小さなお耳が、もしかしたなら“ひくひくっ”て動いたかも知れないほどの高感度にて。真っ先にそれと気づいたらしき坊やがハッと顔を上げ、
「ルイ〜〜〜っ!」
 素早い身ごなしでガードレールに飛びついて。それでは足らぬか、ぴょいっとジャンプまでして乗り上がり、身を乗り出しつつ大きく手を振る。それを認めてのことだろう、傍らの幹線道路をやって来たバイクの方も、徐々にスピードを落として見せると、彼らの丁度真横に停車して、
「待ち合わせは駅前じゃなかったんか?」
 相変わらずのノーヘルじゃあなくっとも、風に大きく裾をはためかせていた白い詰襟学ランという、何とも判りやすいいで立ちで到着した彼こそは。実は今日の主役でもある、賊学カメレオンズの主将、葉柱さんチのルイさんで。
「んん、そうだったんだけどもな。」
 先に着いたからって桜庭と進と、俺らを迎えにって此処まで来ててくれたんだ。説明しながら、ガードレールの下をとっととくぐっていた坊やであり。器用にもそのガードレールに足を掛けつつ、それは手際の良い段取りにて、あっと言う間にゼファーの後部シートへちゃっかりと登り終えていたりして。それをまた、葉柱の側でも咎める気配もないままに、
「忘れもんはねぇんだな?」
 もう一歩先のそんなことを訊いてたりする、二人の連携の見事さよ。
「おうっ。携帯も財布もハンカチも持ってるぞっ♪」
 言いながら、ぎゅううっと大きな背中にしがみつくのは、早くバイクを出せという合図ならしく、
“葉柱くんには見えてないんだろうけど。”
 まるで…そうそう、縫いぐるみや進へとしがみつくセナくんに決して負けてはいないぞというレベルでの、なんて嬉しそうな笑顔をしてますかと。それを直視する格好になったことから、またまた吹き出しそうになったのを必死で取り繕ったアイドルさんへ。こちらさんもそんなポーカーフェイスだったとは気づかなかったらしき、葉柱のお兄さんご本人から、
「じゃあ、俺らは先に行くからよ。」
「あ・ああ、うん。会場でね。」
 試合の方、頑張ってねと笑って励ましたのへ、会釈以上の柔らかな苦笑を返してくれた、なかなかに貫禄ある総長さん。そう。今日は十一月最初の祝日で、尚且つ、高校生アメフトの秋季関東大会の、いよいよの一回戦が催される日。東京代表だけは3チームが割り振られている参加枠、3位決定戦という“プレーオフ”にて、今年は何とか残れた賊学カメレオンズは、今日の午後からの試合に登場することとなっており。桜庭や進の所属する王城の試合は週末の日曜に割り振られていたため、チームの面々も他の試合への観戦にと運ぶ予定であるらしいところ、じゃあ僕らは顔なじみの多いカメレオンズの応援に、いやさ偵察に行って来ますと、監督さんへの進言をしてのこの運び。そんな風に話がまとまっての、こんな顔触れでのお出掛け模様となったのだが、
『…まあ、相手は静岡1位だからなぁ。』
 あの原尾とかいうルイの幼なじみに頼んでおいて、調べてもらってあった“神奈川1位・2位”より資料がない相手だからなぁ、あっさり負けてもそりゃま仕方がないってもんだよなぁなんて、心にもない憎まれを言ってた坊やをふと思い出し、
“それがあの顔なんだからなぁ。”
 大好きなお兄さんの晴れ舞台への出陣が、嬉しくて嬉しくてしようがないと。満面の笑みを頬張ってた坊やのお顔が、何とも言えず…こっちまでもが切なくなるほどに嬉しかった桜庭さん。
“僕らには、あんなお顔をさせてあげられなかったってのが癪だけど。”
 あの、色んな意味から“無敵”の歯医者さんが、事あるごとに大人げなくもムキになって総長さんと張り合ってるのが少しは判るかな。だって、あの小悪魔くんの事、もっとずっと知ってる自分たちなのにって、思わなくもないからね。そんな…僅かばかりの寂しさのようなもの、それこそ感じてしまってたアイドルさんではあったけど。遠ざかってくイグゾーストノイズに、ついついぼんやりと聞き入っていると、

  「桜庭さ〜ん。」

 僕らも早く行きましょうよと、セナくんが声をかけて来て。判りましたよとそちらの二人の後を追う。こちらさんたちもまだまだ眸を離せない、覚束無いところの多いカップルさんたちだからね。だってほら、
「あ・こら、進。セナくんの背中、上着を腕でまくり上げてるぞ。」
 さっそくにもこれだもの、ぼんやりしている暇は無いぞとの苦笑も新たに、足取り軽く二人を追いかけて。ずんと高くなった秋空の下、皆さんそれぞれの充実した一日を過ごすべく、今日も今日とてお忙しそうな気配でございます。







  〜Fine〜  01.11.17.


  *あの賊学が関東大会進出ってのは、出来過ぎておりますかねぇ?
   他のガッコのレベルを舐とんかと叱られそうな運びかも知れないんで、
   私も一応は“どうしたもんか”と躊躇したのですが。
   でも、トーナメント戦なだけに、
   例えば…くじ運にもよるところは大きかろうし、
(おいおい)
   泥門デビルバッツがいないし、(こらこら)
   去年のベスト8以上ってことになると、やっぱし、ねぇ?
(苦笑)

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